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一条アルチメイトファクトリー京都西

ホイール深掘り9 リアドライブ側1交差その3 最終交差で編む(綾を取る)意味

2024年12月1日 [一条アルチメイトファクトリー京都西]

スタッフブログ

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すみません、更新が遅いうえに今回も話が脇道に逸れます。

 

前回の続きです。

同じフランジでもエルボーインとアウトで

・スポーク長に僅かな差がある
・スポークテンションに僅かな差がある

 

のですが、このことは一般的にあまり意識されておらず、通常のスポーク長計算は左右2つのスポーク長を求めます。

ですがフランジのインとアウトで僅かに長さが変わるので、厳密なスポーク長は4つあることになります。

 

個人的には4つのスポーク長を計算し、有意な差がある場合は切り分けています。

その基準は0.4mm程度としていますが、理由はスポークのネジ山1ピッチがおよそ0.45mmだからです。

ネジ山ひとつ分の長さが違うと、ホイールの仮組段階ですべてのニップルを均等に締めたときにエルボーインとアウトでニップル一周ずれることになるので、最終的にはその帳尻を合わせないといけません。

たった0.4mmの差を切り分けるのは一見すると無駄な手間のようですが、全体で見ると作業スピードが上がり、精度も良いという考えです。

 

 

スポーク長が微妙に違うということは、スポークテンションにも微妙な差が生まれます。

スポークテンションはなるべく均一に揃うのが理想なので、同じフランジのインとアウトでバラつくのは避けたいところです。

 

先ほどのスポーク長の差は「有意な差があれば切り分ける」という対処になりますが、スポークテンションの差に対処する方法はあるでしょうか?

 

それが「スポークの最終交差で編む(綾を取る)」ことです。

 

上図左のように綾を取らず非接触で組むとそれぞれのスポークが真っ直ぐリムへ向かうため、エルボーインとアウトで角度差が生まれます。

僅かでも角度に差があるということは、スポークテンションに差が生まれるということです。
参照 ホイール深掘り2 スポークテンションの左右差1

 

一方、上図右のように綾取りするとインとアウト別々の軌道で出発したスポークが綾取りのところで束ねられ、そこから先はほぼ同じ軌道でリムへ向かうことになります。

軌道がほぼ同じになるので、エルボーインとアウトのスポークテンション差が無視できる程度に解消されます。

 

そもそもですが、最終交差で編む(綾を取る)意味はこれに尽きるのではないでしょうか。

結線するため、スポークが切れたときに一気に外れないようにするため、フランジ片面のみの1交差で綾取りせざるを得ない、など他の理由もあるかもしれませんが、いわゆる綾取りした方が剛性が上がる、強度が上がる、という効果はありません。

 

完組ホイールでは綾取りせずに非接触で組まれたホイールは多いです。

リム剛性が十分高ければエルボーインとアウトで僅かにスポークテンションの差があっても大したことではないですし、編まないことによってスポークに余計なストレスがかからない、傷がつかない、軋み音防止、工程の手間軽減などのメリットがあります。

それにアルミやカーボンのスポークなら基本的には編まない方がいいでしょう。

 

ただ通常のステンレススポークであれば、綾取りしてスポークテンションをなるべく揃えた方が組みやすくメンテナンスもしやすいです。

引っ張り側スポークと緩み側スポークが同じ働きをしているという意味でもエルボーインとアウトのスポークテンションは可能な限り揃えたいので、個人的には綾取りして組みます。
参照 ホイール深掘り1 緩む側のスポーク

 

逆に、綾取り無しの非接触で組まれたホイールは、エルボーインとアウトでごく僅かにテンションが違う状態でバランスが取れているということですね。

これが意外と盲点で、綾取りの有無に関係なく、どんなホイールでもとりあえずテンションを均一に揃えればいいと思って調整すると逆にバランスを崩していることになりかねません。

 

 

ということで話が逸れましたが、今回は最終交差で編む(綾を取る)意味についてでした。

最終交差で編むのはごく一般的な手法ですが、いざ「それをする理由は?」と問われると意外に難しいので記事にしました。

次回こそ本筋へ進みます。

 

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