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一条アルチメイトファクトリー京都西

ホイール雑談1 緩む側のスポーク

2024年1月20日 [一条アルチメイトファクトリー京都西]

スタッフブログ

ホイールについての考えをひたすら書いていくシリーズ記事を始めたいと思います。

何の飾り気もなくマニアックな話がずっと続きますし、用語や基本的な説明も省略していることが多いので、興味のない方には全く面白くないと思いますが、興味のある方は是非読んでみてください。

 

 

早速本題に入ります。

まずホイールを考えるうえで、前提になると思う内容を説明します。

上の図はホイールを横から見た状態をすごく単純化したものです。

ホイールはハブ、リム、スポーク、ニップルといった部品から構成されていますが、今回はスポークに注目します。

それぞれのスポーク一本一本にはテンションがかかっています。

それを簡単に表したのが下の図

イメージとしてはこんな感じでしょうか。

スポークのテンションによってハブとリムが引っ張られ、つり合うことで、ハブ・リム・スポーク・ニップルといった部品の集合がホイールとして成立しています。

「つり合う」とは、たとえ一本一本のスポークのテンションにバラつきがあったとしても、全てのスポークテンションの大きさと向きを総合すれば、必ず綺麗にゼロでつり合うということです。

 

これは当たり前のようですが重要です。

つまり、どれか一本のスポークのニップルを締めたり緩めたりしてテンションを変化させたとき、そのスポークのテンションだけが変化するのではなく、全体がつり合うということは他のスポークにも必ず影響がでます。

もちろん「一本 vs その他多数」なので、影響はそれほど大きいわけではないですが、隣のスポークと離れたスポークでは影響の度合いが違います。

どれか一本のスポークだけテンションが強い(もしくは弱い)場合は、他のスポークがその穴埋めをしていたり、リムが上下左右に振れたりすることで、つり合うことになります。

 

少し話が逸れましたので、戻します。

先ほどの図はホイールが宙に浮いてる状態だったとして、実際には車体に取り付けて地面に置いて人が乗ることになるので、上の図のようにハブ軸に重力方向の荷重が発生します。

この荷重を受けて元のスポークテンションはどのように変化し、荷重に対抗してハブを支える仕事をするのはどのスポークでしょうか?

ハブにかかるテンションだけに注目すると上の図のような感じになります。

ハブ軸よりも上半分のスポークは、荷重がかかることでテンションが増加します。

テンションが増加するとハブを上方向へ引っ張る力が強くなるので、ハブを支える働きをします。

これはとても分かりやすいです。

 

横へ行くにしたがって次第にその働きは薄まっていき、水平のスポークになると元のスポークテンションからほぼ変化せず、ハブを真横に引っ張っている状態のため、ハブを上へ支える働きはしていません。
※厳密には難しいですが単純に考えると。

 

問題は下半分のスポークです。

こちらは上半分とは逆に、荷重がかかることでテンションが減少します。

となると下半分はただ緩むだけで何の働きもせず、ハブを支える役割は上半分のスポークが一手に担ってるような印象を受けますが、、、実は違います。

 

下半分はスポークテンションが減少することよって「ハブを下へ引っ張る力」が「減少する」ことになります。

「ハブを下へ引っ張る力」なので、今考えている 「ハブを上へ支える力」とは真逆のものです。

その真逆の力が「減少する」わけですから、マイナスのマイナスはプラスということで、結果的には上半分のスポークと同様に(上半分のスポークと協力して)ハブを上方向へ支える仕事をしています。

 

 

綱引きをイメージすると分かりすいかもしれません。

下半分と上半分が均等に綱を引っ張り合っている状態から、下半分の方向へ縄の中心を動かす力が加わったとします。

これに対抗して縄の中心を元の位置からできるだけ動かさないようにするためには


・上半分はさらに強く引っ張る
・下半分は引っ張っていた力を緩める

 

このようにお互いに協力して、できるだけ縄の中心を元の位置にキープしている感じです。

下半分と上半分でやってることは逆でも、その意味は同じということですが、決定的に違う点がひとつあります。

それは「さらに強く引っ張る」のは頑張ればいくらでもできるが「引っ張っていた力を緩める」のは元々引っ張っていた力の範囲内でしかできない、ということです。

 

元々引っ張っていた力とはもちろんスポークテンションのことです。

 

それ以上に緩めるのは綱引きの綱から手を放すようなことなので、実質スポークが存在しないのと同じになります。

そうなると今度こそ上半分のスポークだけが働くことになり、ホイールとしての効率が悪く、トラブルも出やすくなるので、なるべく緩む側のスポークにもしっかり仕事をしてもらいたい。

そのためにはある程度のスポークテンションが必要ということになります。

 

 

とりあえず今回ご説明したかったのがこの2点

 

【1】引っ張られる側のスポークだけでなく、押される側のスポークも同じ働きをしている

これはホイールの三つの剛性(縦、横、ねじれ)全てで同じことが言えます。
スポークは引っ張りで成立しているので、引っ張られるスポークだけが仕事をするように錯覚しがちですが、緩む側、つまり押される側のスポークも同じ働きをしています。

元々のテンションからの”変化だけ”を矢印で表せば上の図のようになります。

緩む側のスポークテンションの変化(青)は、まさに押しています。

 

スポークで押すというと、かつてのMAVIC R-SYSを思い出します。

太い中空カーボンスポークが引っ張りと突っ張りの両方に働く独特の構造でしたが、普通のテンションホイールも質は違えど基本的には同じ働きをしていたわけです。

 

 

【2】緩む側のスポークが働くためには、一定のテンションが必要

テンションの左右差を出来るだけ少なくするなど色々と工夫するべき理由の多くはこれに尽きると思います。
いかに緩む側のスポークの働きをよくして、全部のスポークをしっかり活躍させるか。

 

それが効率の良いホイール、トラブルの少ないホイールの大きな条件になるのではないでしょうか。

次回に続く

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