一条アルチメイトファクトリー京都西
ホイール雑談7 リアドライブ側1交差 その1
2024年3月13日 [一条アルチメイトファクトリー京都西]
・高テンション側は交差数を少なく
・低テンション側は交差数を多く
することで左右のテンション比率が近づく、ということでした。
これ自体はよく知られたことです。
では最も理想的な交差数の組み合わせは何か?という疑問が出てきます。
単純に交差数の差を最大にするなら
・高テンション側:0交差(ラジアル)
・低テンション側:4交差
になりますが、これはあまり実用的とは言えません。
まず高テンション側0交差については、角度が自由に動くJベンドスポークで駆動側をラジアル組にするのは、駆動剛性の面で若干の不安があります。
「若干の」というのは、過去に自分のホイールで駆動側ラジアル組を短期間試した経験があり、意外にも違和感はそれほど感じなかったのですが、自分の体重は60kg弱、パワーも低く、乗り方もファンライドです。
スポークに角度がある1交差以上と角度がない0交差(ラジアル)では駆動剛性の質が根本的に変わるはずなので、パワーのあるライダーがハードに乗れば違和感やトラブルが出るかもしれません。
他にもうひとつ分かりやすい理由(次回説明)があって、高テンション側をラジアルで組むことはまずありません。
次に低テンション側4交差は、有効な場合が何かと限定されやすいです。
まず4交差を組めるのは28本以上という条件がありますし、本数・ERD・フランジ径の兼ね合いよってはスポーク長がかなり長くなってしまい、目当てのスポークが入手しにくい場合があります。
さらに32本以下の4交差は、スポークの軌道が隣のスポークの頭に被るオーバーラップがほぼ起こります。
オーバーラップしても組むことは出来ますが、スポークの交換がやや面倒になるので整備性は悪くなります。
多少の整備性は無視したとしても、オーバーラップするということは、スポークの角度が4交差と3交差でほとんど変わらない(場合によっては逆転する)ということです。
スポークの角度が4交差と3交差で変わらないことが何を意味するのか?
一旦ここで交差数の違いによる効果を簡単にまとめてみます。
<交差数が少ないほど>
スポークが短くなるので
・ブレース角度が大きくなり横剛性が高くなる
・重量が軽くなる
・スポークのバネレートが高くなる
スポークの交差角度が小さくなるので
・駆動剛性が低くなる
・縦剛性が高くなる
<交差数が多いほど>
スポークが長くなるので
・ブレース角度が小さくなり横剛性が低くなる
・重量が重くなる
・スポークのバネレートが低くなる
スポークの交差角度が大きくなるので
・駆動剛性が高くなる
・縦剛性が低くなる
以上のことから、オーバーラップする4交差は3交差に対して
スポークが長くなるので
・ブレース角度が小さくなり横剛性が低くなる
・重量が重くなる
・スポークのバネレートが低くなる
スポークの交差角度はあまり変わらないので
・駆動剛性はほぼ同じか、低くなる(※)
・縦剛性もほぼ同じか、低くなる(※)
※角度は同じでも、スポークが長くなりバネレートが下がるため
スポークの入手性・整備性が悪くなる
このようにデメリットが増えるだけで、メリットはほとんどありません。
もちろんテンションの左右差が改善されることがメリットですし、バネレートや剛性が下がることも一概にデメリットとは言えません。
そういった理由が優先されるなら4交差を採用することも稀にあります。
ですが大抵の場合は3交差までで十分ですし、わざわざ4交差にする意味があまりないので、採用することはほとんどありません。
ということで、実用性を考えると
・高テンション側:1交差
・低テンション側:3交差
これが理想的(リアホイールの場合)だと個人的には思います。
当たり前ですが、全てに当てはまるわけではなく条件によって変わりますし、高テンション側1交差については使えない場合や注意点もいくつかあります。
次回に続く