一条アルチメイトファクトリー京都西
ホイール深掘り5 ハイローフランジハブの効果2
2024年2月1日 [一条アルチメイトファクトリー京都西]
<前回 ホイール深掘り4 ハイローフランジハブの効果1
次回> ホイール深掘り6 スポークの選択1
前回は条件によってハイローフランジハブは逆効果になるということでした。
その理由はスポークの交差数と本数によって、フランジ径の大小が与える影響が変わるからです。
ラジアル組の場合、フランジ径が大きくなるほど単純にスポークは短くなります。
タンジェント組の場合、フランジ径が大きくなるからといって、必ずしもスポークが短くなるわけではありません。
実際に上図ではフランジ径が大きい右の方が、わずかにスポーク長は長いです。
そしてもうひとつ、交差角度に注目すればフランジ径が大きくなるほど交差角度は大きくなります。
・スポークが長くなる
・交差角度が大きくなる
この2つは低テンション側のテンションを上げる条件そのものでした。
ですので、上図の条件では低テンション側のフランジ径が大きくなるほどテンション比率は改善することになり、ハイローフランジの意図とは逆のことがおこります。
ではハイローフランジはすべて逆効果か?というとそうではなく、条件によります。
条件とはラジアル組に近いかどうかです。
ラジアル組に近づくほどハイローフランジは有効で、ラジアル組から離れるほど逆効果になります。
ラジアル組に近づくとは
・スポーク交差数が少ない
・スポーク本数が多い
です。
スポーク交差数が少ないほどラジアル組(0交差)に近づくのは当たり前として
スポーク本数が増えるほどラジアルに近づく理由は、本数が増えるほどスポーク同士の間隔が狭くなるためです。
上の図ではスポーク本数以外の条件はすべて同じにしていますが、スポーク本数の多い右の方が、スポーク長は短く交差角度も小さいです。
つまりラジアル組に近づいています。
これらの関係をざっくりとですが、まとめてみました。
~ハイローフランジ有効度~
【〇】有効
効果あり。左右同径でハイフランジにするよりハイローの方がテンション差が改善される。
【△】微妙
効果は微妙かほとんど無し。左右同径ハイフランジの方がテンション差が改善される。
【✕】逆効果
逆効果。むしろ逆ハイローフランジにした方が有効。
<左右とも3交差>
24H:✕ 28H:✕ 32H:〇
<左右とも2交差>
24H:〇 28H:〇 32H:〇
<高テンション側:2交差、低テンション側:3交差>
24H:✕ 28H:△ 32H:〇
<高テンション側:1交差、低テンション側:3交差>
24H:△ 28H:△ 32H:〇
全ての条件を調べたわけではないですが、おおよそ以下のような傾向になると思います。
・2交差以下はハイローフランジの効果が出やすく、3交差以上は逆効果になりやすい。
・32H以上は有効で、28H以下は交差数による。
注目は「24H、高テンション側2交差、低テンション側3交差」の条件で逆効果になることではないでしょうか。
割とよくある条件なので意外に思われる方も多いと思います。
ただしハイローフランジが逆効果といっても、左右とも2交差で組むより2交差/3交差にする方がテンション比率は改善するので、その点だけは注意してください。
〇とか✕は、あくまでもハイローフランジハブが有効かどうかです。
個人的には28H以下で左右の交差数を変える条件では、有効度がほぼ✕か△という結果なので、ハイローフランジハブを選ぶべき理由はほぼ無いことが分かりました。
ほとんどのケースでは左右同径でややハイフランジの方が有効ですし、24Hならむしろ逆ハイローフランジの方が良いかもしれません。
ちなみに有名完組ホイールでハイローフランジハブの採用率が高いのは、専用ストレートスポークで左右のスポーク本数が2:1(1側ラジアル組)となる組み方においては非常に効果的だからです。
このような完組ホイールならではの特別な条件に限って有効なのがハイローフランジハブだと言えます。
通常の左右同数スポークでも低テンション側をラジアル組にするならハイローフランジハブの効果は大きいですが、そもそも左右同数スポークのホイールで低テンション側をラジアル組にするのは最も悪いと思われる組み方ですので、ハイローフランジハブの効果以前の問題となります。
<参照>ホイール深掘り2 スポークテンションの左右差1
<参照>ホイール深掘り3 スポークテンションの左右差2
ですが意外とこの「左右同数スポークで低テンション側ラジアル組」で組まれたホイールというのは、2010年代のロードホイールでかなり一般的だったこともあり数が多いです。
弊店ではこのタイプのホイールを組み替えるカスタムを多く行っており、効果も高いのでおススメしています。
気になる方は是非ご相談ください。
次回に続く